結婚式に行きました1

 2月の半ば、小学生の頃からの付き合いの幼馴染Yが北海道から東京に来たので、お互いやや忙しい中、なんとか会えることになり、私はウキウキしていました。札幌にいるときはいつも、Yと、中学の同級生Mと、私の3人でファミレスに集まって、本当にどうでもいいことを話すのが恒例でした。久しぶりに会っても、お互いの近況の報告というより、サラダバーのことや、最近見た夢のことなど、本当にどうでもいいことを話すのです。そして私はそれがとても好きでした。

 その日もいつものように、帰宅する頃には忘れてしまうようなことを話して、楽しく過ごすのだろうと思っていました。お店に入り、飲み物を注文し、Yが切り出しました。

「私、結婚するんだよね。」

まるでカミナリに打たれたような衝撃でした。あの、一緒に下校していたYが、一緒にSPEEDやプッチモニの振り付けを練習したYが、一緒にすごいよマサルさんを読んだYが、一緒に生徒会で遅くまで作業したY(会長)が、一緒に受験勉強したYが、私の知らないところでどんどん大人の女性としてキャリアを積み、成長し、男性と愛を育んでいたのです。私がブランコを漕ぎながらデカメロン伝説を熱唱していた間に(2013)、私が水風船のヨーヨーで遊びながら半袖短パンで道を歩いていた間に(2014)、Yはしっかりと将来や人生を見つめ、着実に自分の道を歩んでいたのです。

 とにかく、Yが幸せになるというのは、私にとっても大変喜ばしいことで、ましてや親しい友人から結婚の報告を受けたのは、それが初めてだったため、上半期下半期合わせても今年一番のニュースだわ、と思いました。そして、婚姻って何?と思いました。

「おめでとう!おめでとう!私も嬉しい!(でも婚姻って何?)」

という感じで別れ、後日、結婚式の招待状が届き、私は初めて、結婚式に出席することになりました。(以前、親戚の式に参加したことはあるものの、まだ中学生くらいだったため、お祝いの気持ちも薄く、あまり記憶にありません。)

 

 さて、結婚式に出席するには、服、靴、鞄が必要です。リクルートスーツで行けば、おそらく式場や披露宴会場のスタッフだと思われ、こっちグラス足りないんですけど、などと言われてしまう恐れがあります。ブラックフォーマルで行けば、いくら礼服とはいえ、不謹慎なウジ虫女と思われかねません。結婚式の服装のマナーを調べると、色や素材、形など、細かく決められているではありませんか。そしてそれらをパーフェクトに破っている、辻ちゃん紗栄子ユッキーナの情報。わざとか、というくらいマナー違反を網羅しており、見ていて気持ちが良いほどです。とりあえず近所のデパートにドレスを探しに行ったのですが、どれもプリンセス気取りのババアという感じで、店員さんの前で、思わず顔をしかめてしまうような服しかなかったので、結局ZOZOTOWNで若々しい服を買いました。でもそれも、すぐにシワシワになるような素材の残念極まりない服でした。

 

 式の前日、明日に備えて早く寝ようと布団に入ったものの、どんどんどんどん緊張してきて、結局ほとんど眠れなかったので、私は売れっ子アイドル、2時間睡眠は当たり前、むしろ忙しいことに感謝、ありがとうございます神様、と自己暗示をかけました。6時過ぎのリムジンバスで羽田に向かい、飛行機に乗りました。貧しい生活を送っている私に、結婚のお祝いにお金を包んだり、プレゼントを贈ったりする余裕はなく、もしそのようなことをしても、Yはとても気にするだろうと思い、せめてもの償いに、手紙を書くことにしました。飛行機は、搭乗が遅れている乗客がいるらしく、なかなか出発しません。私は、過去を振り返り、Yとの思い出を綴っていきます。『そう、Yとはあんなことがあったよね。』隣の席のおじさんは、ひじ置きに指をトントントントントントンしています。『Yは私にいつも優しくて、すごく尊敬しているし、』トントントントントントントントントン。『Yが家族になろうと決めた人ならきっとすごく素敵な人だね。』トントントントントントントントントン。その時通りかかったCAさんに、隣の席のおじさん改めジジイが

「何分遅れてるの?なんで?さっきあそこに立ってた男のせいか?え?」

と怒りをぶつけ始め、通路側に座る私は、クレームをつけるジジイと、困るCAさんに挟まれながら『ふたりならきっと何があっても大丈夫だね。』と手紙を書き続けました。年のせいで感情が抑えられないにしても、急いでるのはジジイだけじゃないし、CAさんは出来る限りのことをしているだろうし、そもそも飛行機は定刻通りに運行しないことの方が多いし、それをたかだか6分の遅れで文句言うくらいなら、様々な事態を想定してもっと早い便に乗れよジジイ、と間違えて手紙に綴りそうになりました。

 新千歳からJR、バス(乗客の95%が老人)に乗り継いで、実家に帰り、

「化粧下手になったんじゃない?」

などと母に軽くディスられながら準備をして、美容室で髪をセットしてもらい、着替えを済ませ、札幌駅に向かい、会場までの送迎バスに乗りました。バスの中には知らない人しかいません。一番後ろの端の席に座り、アウェイだし、みんな大人だけどきっと同い年とかなんだろうな、どうしよう、もっと緊張してきた、などと考えているうちに、どんどんお腹が痛くなってきました。会場までは、30分くらいかかるので、とにかくお腹から意識を遠ざけ、豊平川よさこいソーランの練習をする人々を眺めたり、車で直接会場に向かっている中学の同級生Mとメールをしたりして、やり過ごしました。

M「二次会行く?」

私「行くよ!お腹痛い!Mは?」

M「良かった〜私も行くよ!久しぶりに会えるの楽しみ!」

私「私も楽しみ!一緒に帰ろう!下痢しそう!」

 

 

 

つづく

 

画像は、結婚の報告を受けた日の私のツイートです。

f:id:mgrtmcy:20150610021257j:plain